
不動産コラム#27【京都の町家について|今後の課題と対応、成功事例のご紹介】

はじめに
京都の町家(まちや)は、日本の伝統的な都市型住宅として知られ、格子戸や坪庭、通り庭など、独特の構造美と生活文化を今に伝えています。
しかし、近年では老朽化や維持コストの高騰など、さまざまな課題に直面しています。
この記事では、「京都の町家の現状と課題」、そして「再生の成功事例」についてご紹介します。
京都の町家が抱える主な課題
1. 老朽化と耐震性の問題
築100年を超える町家も多く、老朽化が深刻化しています。
現代の耐震基準を満たしていないケースも多く、大規模地震に対するリスクが高いのが現状です。
改修には専門技術と高額な費用が必要となることが多いです。
2. 維持・修繕コストの高さ
町家は漆喰や木材、瓦など伝統的な素材を使用しているため、修繕・維持にも高い技術とコストがかかります。
また、町家職人の高齢化・後継者不足も進み、技術継承が大きな課題となっています。
3. 現代の暮らしとの不適合
町家の魅力である「風通しの良さ」や「趣のある空間」も、冷暖房効率やプライバシーの観点では不便に感じられることがあります。
バリアフリー化、防音・防火性能など、現代生活に合わせた改修が求められています。
4. 空き家・取り壊しの増加
管理が難しく空き家となった町家が増え、やがて取り壊されてマンションやホテルへと建て替えられるケースも。
これにより、京都らしい街並みが失われつつあります。
また、放置空き家は防災・防犯面でも地域に悪影響を及ぼしています。
5. 観光開発と地域住民との摩擦
町家を宿泊施設やカフェなどにリノベーションする動きも盛んですが、観光客の増加により住民との摩擦が生じるケースも。
「住む町家」と「見せる町家」のバランスが課題となっています。
6. 法制度と支援体制の課題
建築基準法や都市計画法などが町家改修の障壁となることもあります。
補助金制度は存在しますが、手続きが煩雑で利用しづらいとの声も。
文化財指定を受けていない町家への支援が届きにくい現状があります。
7. 気候変動への対応
猛暑や豪雨など、気候変動が進む中で、町家はその構造上、現代の気象条件に対応しにくい側面もあります。
「風通しの良さ」という利点を活かしつつ、断熱性・防水性を高める改修が今後のテーマです。
これから求められる取り組み
✅ 町家に適した法整備・柔軟な制度運用
✅ 職人技術の継承と人材育成
✅ 住まいとしての改修支援
✅ 観光と地域生活の共存
✅ 空き家対策・マッチング支援
✅ 地域活性化につながる町家活用モデルの確立
京都での町家再生の成功事例
① Nazuna 京都 椿通
四条大宮近くの築110年以上の町家群を、旅館+レストランの複合施設として再生。
23棟の客室と飲食施設を整備し、「町家の街並み」を一体的に再生したプロジェクトです。
○成功ポイント
町並み単位での再生により“京都の風情”を維持
一棟貸切によるプライバシー確保と高い宿泊満足度
テーマ性(竹・水・花など)を持たせて差別化
複合用途化により収益性を向上
② 京町家賃貸モデル事業 第3号(京都市)
築100年以上の町家を借り上げ、改修後に宿泊兼社宅として活用する京都市のモデル事業。
職人育成や地域イベントなども同時に行い、文化継承を意識したプロジェクトです。
○成功ポイント
行政支援制度を活用したモデルケース
宿泊+社宅など複合活用で収益性を確保
改修プロセスを公開し、職人育成・地域連携を促進
③ 町家一棟貸し宿「町家レジデンスイン京都」
伝統的な京町家を改修し、2〜10名向けの一棟貸し宿として運営。
旅館業許可を取得し、安全面にも配慮しています。
▶ 公式サイトはこちら
○成功ポイント
“町家に泊まる”という体験価値の提供
許認可をクリアした安心運営
アクセス性と町家らしさの両立
④ 空き家再生事例:京都・白川沿いの京町家
築115年以上の空き町家を一棟貸し宿泊施設として再生。
白川沿いという立地の魅力を最大限に活かし、京都らしい宿泊体験を提供しています。
○成功ポイント
立地と雰囲気を最大限に活用
貸切形式による高付加価値化
風情を評価する層に訴求し、収益化を実現
成功事例に共通するポイント
複合性と用途の工夫
宿泊+飲食、宿泊+社宅など、収益源を複数確保
行政支援の活用
補助金・賃貸モデルなどを活かしてコスト負担を軽減
文化・素材・町並みを活かす設計
土間・中庭・格子戸など、町家らしさを残す
地域との関わり
見学会やイベントを通して地域と共生
法令遵守・安全性確保
旅館業許可や耐震補強など、長期運営の基盤を確立
まとめ
京都の町家は「住む」「残す」「活かす」ための工夫が求められる時代に入りました。
古き良き文化を次世代に継ぐためには、行政・事業者・地域が一体となって、持続可能な町家活用の形を模索する必要があります。
町家の再生は、“京都らしさ”を未来へつなぐ挑戦でもあります。
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